金城 武 ロングインタビュー
「孔明さまは、台湾生まれの僕にとっては神様みたいな存在で。『三国志』という物語の登場人物としてよりも先に、子どものころ、お寺で見かけたんです。母親に『これ誰?』『観音さまよ』『じゃあこっちは?』『孔明さま』っていう感じで教わったぐらいのもの」
たっぷり自然光が入る、ホテルの高層階のスイートルーム。軽く頬杖をついて、こんな微笑ましいエピソードを語るだけで、画になる。大げさではなく映画の1シーンのようだ。
だがこんなふうに簡単に“画になる”ことに苦しめられた時代もあったのだ…が、それは今は措く。
ハードな暴力描写と男泣きの友情、そして平和の象徴として飛び立つ鳩、美しいスローモーションの映像美。男の道をつねにわれわれに教えてくれる導師、ジョン・ウーが『三国志』を題材に取り『レッドクリフ』という超大作を撮りあげた。そこで諸葛孔明を演じたのが金城 武だ。
「プレッシャーはありました。でも喜びが先にきてたと思う。ふたつの喜び。孔明さまという、知恵の力で次々と難しい局面を切り抜けてきた偉大な方を演じられること。そしてもちろん、ジョン・ウーに声をかけられた喜び。“僕でいいんですか”という感じ(笑)」
まぎれもない本音である。『三国志』は厄介な作品だ。好きな者にはそれぞれ“俺だけの三国志観”があるから。
「孔明さまを演じるうえで、もちろんいろんなことを調べました。映画やビデオを観たし、歴史書や小説も読んだ。資料に目を通すにつれ、人物像の多様な捉え方に驚きました。書く人の視点や彼らの接してきた文化によって、こんなにも変わるのかと。最終的には、いろんな形で表現されている孔明像の魅力を抽出し、さらに僕が凝縮して出せたらいいなと思ったんです」
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