http://woman.excite.co.jp/cinema/feature/drywhisky/interview/
「監督からの指示はただ一つ「飲みながらやれ。」ということだったんです。」
--『傷だらけの男たち』で金城武が演じるのは、恋人を自殺という形で失い、深く傷ついた元刑事ポン。傷ついた心をごまかすために酒びたりになり、アルコール依存症の探偵になりさがってしまった男を演じるにあたって、撮影現場での必需品はウィスキーだったのだという。
「毎日現場では、僕用のウィスキーが用意されていてたんです。シーンによっては、監督から「足りないから、もっと飲んで来い!」って言われることもしばしば。一番飲んだのは、最後の最も大事なシーンの撮影の時ですね。撮影終了した時には「お前はもう帰れ」と言われるくらい酔ってました(笑)。
酔っ払いの芝居ってすごく難しいと思うんですよ。大袈裟に見せる舞台とは違って、スクリーンだとあくまで自然に見せないといけないでしょ。でも少々酔って演じることによって、自分の演技に確信を持つことができ、自信を持って演じることができたと思います。酔っ払い過ぎてては困るけどね(笑)。」
--アルコールの力もあったのか、撮影現場は和やかで一体感があった様子。それもそのはず、大ヒットした『インファナル・アフェア』シリーズのスタッフ、キャストが再集結した現場だからだ。金城はインファナルシリーズには出演こそしなかったが、監督・脚本をつとめたアンドリュー・ラウやアラン・マックらとは、過去に出演していたウォン・カーウァイ作品で同じ現場にいた経験もある。
「"ユニオン"ではないけれど、昔から知っている方々と再び一緒に映画を作れる、ということがとても嬉しかったですね。現場では、ずっと一緒にやってきたような感覚もありました。トニー・レオンさんとは、ウォン・カーウァイ監督の『恋する惑星』で同じ映画に出演してはいるんですけど、シーンがかぶらなかったので、いつもすれ違いだったんですよ。そして今回共演できて本当に感激しています。」
--尊敬する先輩であるトニー・レオンとは最初は緊張して、目を見ることができなかった、と明かす金城武。そんなトニーの魅力について熱っぽく語ってもらった。
「トニーさんはとにかく安定感がすごい!自分の役に対する分析と事前の勉強に熱心だから、あの安定感が生まれるんでしょうね。それが周囲にいる僕らにも伝わってくるから、勉強にもなる。共演してみて、さすがカンヌで受賞される方だな、と納得させられました。その上、すごく優しい方だし。」
--そして、『インファナル・アフェア』が『ディパーテッド』としてハリウッドリメイクされたように、本作『傷だらけの男たち』もハリウッドリメイクが決定している。しかも主演はレオナルド・ディカプリオだ。
「一つの作品が、違う人の手によって、違う国で、違う解釈で、複数作られることは良いことだと思いますよ。最近は"紳士協定"のようにきちんと「リメイクします!」って宣言するじゃないですか。それも僕は賛成ですね。但し、リメイクする以上、僕たちが作ったものよりも優れたものを作って欲しいと思います。そうすれば、リメイク作品を観て、僕らは、「なるほど、この場面はこうやって膨らますことができるのか」と、自分たちの作品を違う角度で再度見直すことができると思うんですよ。」
--そんな金城武自身も、香港映画のみならず、中国、日本などアジアでの活躍の場が広い。日本語、台湾語、北京語、広東語、英語と5つの言葉に堪能で各国に精通する彼に国による違いを聞いてみた。
「日本はやはり、"和"を大事にしていると思うんですよね。撮影現場では"表示されていないルール"みたいなものがあって、皆それを守るようにしているから、ドラマでも映画の撮影でも一貫した同じ空気がある。一方、香港や中国は、監督やクリエイターにより空間の色が違いますね。作品では当然、違いがでてくるけれど、日本の現場は、文化をまず重んじてるんだな、と感じます。」
--たて続けの映画出演により、再び、金城武の活躍が目立つが、最近心境の変化があったのだろうか?
「心境の変化は常に誰でもあると思いますよ。でも最近、自分でも仕事してるな、と感心しますね(笑)。しかしこれは、僕が変わったのではなく、今現在、"中国"というマーケットが激しく動いているんだと思うんですよ。役者だけでなくスタッフもみんな忙しく、環境がすごいスピードで動いている状態。中国市場がとても元気がいいから、ハリウッドはじめ、全世界も参加しようとしている。その勢いにのって、みんなのチャンスも広がっているんでしょうね。」